「リペア職人」という耳慣れない言葉に、とても興味を持った。地球に優しい職業だなぁ...まずそんなことを思った。何となくやっていることは言葉からも伝わってくる。しかしインテリアに関わる仕事のひとつに、リペア(修理)を専門としている方がいるとは、意外だった。
"職人"という言葉から、どんな方がお話を聞かせてくれるのだろうか...と思っていたのだが、実際お会いした小寺さんは、実に穏やかな好青年だった。
ユーズド家具の魅力に取りつかれ、この世界に進んだという小寺さん。今回はそんな彼に「リペア職人」という職業について、またその仕事を選んだ彼自身について話をうかがった。
スカンジナビアン・ファニチャーサービスでリペア職人となり、今年で5年目を迎える、小寺さん。まず、彼がこの世界に進む前の時点に話はさかのぼる。そもそもインテリアに関わる仕事を始めようと思ったのは、なぜだったのだろうか?
「もともと、車でも家具でも40、50年代の古い物が好きでした。でもそれはあくまで好みであって、まさか自分がインテリアとか、こういうユーズド家具に関わる仕事に就くとは思ってもいませんでしたね」

名古屋の大学で経営学を学び、卒業を迎えるという頃。漠然とした気持ちではあったが、"物を作る仕事がしたい!"彼はそう思うようになったのだという。とはいえ、今までそういう仕事について考えたこともなく、どの道に進むべきなのか、ずいぶん迷ったそうだ。デザイナー?何かを作り上げる職人...?
そこで出した彼の答えが、「とにかく物作りに携わろう」ということだった。
「卒業後、名古屋から上京して家具デザイン研究所に進学しました。1年間通学し、家具を通して物を作るということに携わり始めました」
在学中、座学中心ではあったものの、実技などの時間で実際に物作りをしていくうちに、ますますその魅力にのめり込んでいったという小寺さん。そうして研究所を卒業する頃、彼にひとつの出会いが訪れる。
「研究所を卒業してからどういう道に進もうか、考えているときに、先生からおもしろい家具ショップがあるよと、ここのスカンジナビアン・ファニチャーサービスを紹介してもらいました。実際にショップを訪れてみて、北欧のユーズド家具に触れ、"コレだ!"と思ったんです」
店内に北欧のユーズド家具が所狭しと並ぶ、スカンジナビアン・ファニチャーサービス。取材時に訪れた私でさえ、その魅力に惹かれたほどだ。家具に携わっている人ならなおさらだろう。
「また、家具を"リペア(修理)する"というところにも強く惹かれました。家具を一から作るということを学んで来ましたが、自分自身ではそこにこだわってはいなかったんですね。"リペアする"ということに魅力を感じました」
そうして晴れて、スカンジナビアン・ファニチャーサービスのリペア職人となった、小寺さん。仕事を始めてからは、どんなエピソードが彼を待っていたのだろうか。
リペア職人として働き始め、まず任されたのが、リペアする家具の塗装をスチールウールで磨くことだった。実はこれ、リペアする上でとても大事な行程でもあるそうなのだ。
家具リペアの行程は、とても細かなそして感覚的な作業から成っている。
普段作業をしている工房へ場所を移し、実際に作業をしているところを見せていただいた。古い塗装を軽やかに落としていく小寺さん。けれども見た目ほど簡単な作業ではない。サンドペーパーで古い塗装をきれいに落とさないと、次に塗装したときに、きれいな色が出ないのだという。その加減によって仕上がりが大きく変わるのである。
「何度も手で触りながら、確認して塗装を落としていきます。落とし過ぎても程よい風合いが出ないんですよ。その加減は、何度もやっていかないとつかめないですね」
基本的にスカンジナビアン・ファニチャーサービスの家具は1点ものである。そのため、すこしやり過ぎたから...といって、替えはきかない。ある意味失敗が許されない、それがリペア職人の仕事なのである。日々緊張だと、小寺さんは話す。指先の神経を尖らせて、その感覚を覚えていく、そんな毎日が続いた。
職人として始めた頃は、サイドテーブルなど小さいものでも1日がかりの仕事だった。しかし今では、そういうテーブルなら半日で、3人がけのソファなどは、座面の直しを入れても3日くらいで直せるそうだ。今は自分のペースで、ONとOFFを切り替えながら、楽しんで仕事が出来ているという。
そんなふうに仕事に楽しみや喜びを見いだせるようになったのは、あるひとつのリペア案件がきっかけだったそうだ。それはある思い出の品を修理するという仕事だった。
リペア職人として歩み始めて、3、4年が経った頃。小寺さんはあるひとつの思い出深いリペア案件と出会った。それは"祖父の形見であるビューロをリペアして欲しい"というものだった。
実はその品は、スカンジナビアン・ファニチャーサービスで取り扱っている商品ではなく、ある個人の方が長い間普段づかいしていたものだったそうだ。通常は自社で取り扱っているものだけをリペアしているのだが、このときは思い出の品なのでぜひに...とご依頼を受けたため、引き受けたという経緯があったのだとか。

それを担当したのが、小寺さんだった。まず思ったのは「失敗は許されない...!」ということだったと彼は当時を振り返る。形見といえば、それまでに使ってきた人の愛着や思い出が詰まっているもの。普段以上に緊張し、また気が引き締まる思いがしたという。
依頼されたビューロは、かなり長い間愛用されていたもので、けっこう傷みが激しい状態だった。ちなみにビューロとは、棚にもデスク代わりにもなるもので、引き出しなどもついている収納家具である。こういった用途から考えても、かなり使い込まれているとなると、各所にキズや傷みが出ている状態はなんとなく想像がつくだろう。
そういう難易度の高いリペア案件ではあったが、大きなトラブルもなく、修理は無事完了した。仕上がったビューロを見てそのお客さんはとても喜んでくれたそうだ。「ありがとう!」と言われたそのお礼の言葉は、今でも忘れられないと小寺さんは話す。達成感とそして何とも言えない嬉しさを感じたのだと言う。
「ありがとう」という何気ない言葉ではあるが、喜びの笑顔とともに伝えられると、それは倍以上のパワーになる。小寺さんのそのエピソードから、そんなことを感じた。
これからもリペア職人としてますます頑張っていきたいと話す小寺さんに、今後やってみたいことは?という質問を投げかけてみた。
「ひそかに考えているのは、遊びゴコロのあるユーズド家具を出してみたいなと。たとえば、リペアしたユーズド家具の引き出しをブラックとかポップなカラーとかに塗装して、"ユーズド家具+α"なオリジナルユーズド家具というのも、おもしろいんじゃないかなと思うんです」
それは斬新なアイデア!確かに、シンプルさが特徴の北欧ユーズド家具に一部カラーリングするというのは、他にはないオリジナルの家具だ。インテリアのアクセントにもなりそう。しかし彼は「すこし気になる点もあるんです...」と続ける。
「本来の北欧ユーズド家具の魅力として、木目の風合いとかシンプルさとかがあると思うので、それを壊さないようにしたいという気もありますね」
北欧のユーズド家具に魅せられた職人らしい、そんなコメントだった。
これまで受け継がれてきた北欧のユーズド家具の魅力を、"リペア(修理)"という面から支え、また新しい世界をも切り開いていこうとする小寺さん。まだまだ彼の挑戦は始まったばかりだ。
スカンジナビアン・ファニチャーサービス
東京都世田谷区玉川台2-2-3
tel: 03-3708-2266
http://www.e-sfs.com/
| 営業時間: | 平日12:00〜19:00 |
|---|---|
| 土日祝11:00〜20:00 | |
| 定休日: | 水曜 |

出社&ショップの掃除
今日一日のスケジュールをCHECK!
大半が、工房での作業
大きいものだと一日中、小さいものだと2、3点を修理
だいたい1カ月平均して、14〜15点くらいのリペアに携わる
たまに、接客や家具の配達も
業務終了
「結構長時間にわたる仕事。好きじゃないとできない仕事だと思う」と小寺さん。
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