連載「○○×橋本直征」 光・照明×橋本直征 interior(n)interview Vol.7-2

今回は、「光・照明」にクローズアップする企画の後編。

前編では、「光・照明」のこれまでについてのお話を、湯田さんに教えていただきましたが、後編では、これから先の「光・照明」について、橋本氏とともに語っていただきます。今注目のLED照明の話から、日本の照明文化の未来の話へ。
また、湯田さんが照明のこれからを少しでも変えられたら...と活動されている光の運動体「TREND OF LIGHT」についてもご紹介いただきます!


「光」「照明」を身近に感じ、知るきっかけをぜひつかんでいただければと思います。

「光・照明×橋本直征」前編はこちら

interior(n)interview これからの光、LED

前編で見てきたとおり、日本にはかつて独自の照明文化があった。それが大きく変化したのは、戦後のこと。日本では"蛍光灯"が一般的な照明として広がり、最近では"LED照明"にその主軸が移り始めている。
今回の企画を練っている時にも、「LEDについて知りたい」という声はインテリアン読者の皆さんからもいただいていた。今、ユーザーにとって非常に注目度が高い話題のようだ。

日本の照明のこれからを語るうえで、避けては通れない"LED照明"について。まずはそこから話を始めていこうと思う。

「LED照明がいいと言われますが、どういう点がいいところだと思いますか?」

インタビュー中、湯田さんからそんな質問を受けた。
CO2削減、電気代を下げる...つまり"エコ"の面から考えていいと言われているのが、LED照明。そんな認識だった。

「エコを実現するなら、極端な話、照明を使わないことが一番です。まずは消すことから始めない...と」

そこが本来、照明ができる環境貢献で啓蒙すべきポイントだと湯田さんは話す。 そしてさらに、エコを実現するための蛍光ランプやLEDへの切り替え促進において、長寿命や省エネといった利点は電気を使うことが大前提になっているとも話す。

「たとえば、LED照明を1日10時間以上使って10年保つと言われても、一般の住宅環境でのメリットはどうだろう?と疑問が残るんです。一方、メンテナンスしづらい、常に使う環境というような商業施設、オフィスなどでは効果が感じやすいのではないかと思っています」

また、LEDは半導体の一種。ということは、新しくバージョンアップしていく可能性もあるだろう。そうすると、耐久年数の10年を待っている間に、技術はどんどん進化し、更に性能の良いLEDが次々に登場するのではないかとも考えられるそうなのだ。

「LEDは、実はまだイノベーション途中の光源。現状まだ正式に規格化されてなく、作るメーカー各社によって明るさなどの性質が全く違うという現状もあり、知識のない一般消費者は惑わされてしまいます。LEDは今後まだまだ開発されていく、これからの光源だと思います」

今"LED"が推されているので、まさかそんな背景があるとは...!橋本氏も編集部も驚きの事実だった。
知識がないというのは、いろいろ間違った方向に進みがちである。湯田さんも次のように語る。

「LEDに関して言えば、前述のような理由から今はまだ技術の発展途上だからこそ知識を持って使っていくことが必要だと思います。特に住宅環境ではそうしないと、本来私たちが必要とする適した光・照明として使えないからです」

湯田さん自身、照明に関する"さまざまな知識を伝える場"の必要性を感じているという。そうして実際に活動しているのが、「TREND OF LIGHT」だ。 そこでは、正しい照明の情報・使い方を照明のプロフェッショナルとして良いことも悪いことも伝える場としているのだそう。

次はその「TREND OF LIGHT」の活動について紹介していこう。

interior(n)interview ユーザーが正しい目で選べるように

湯田さんが主宰する「TREND OF LIGHT(以下、TOL)」。こちらでは、照明を中心に光に関わる正しい情報を伝え、エンドユーザーである消費者が正しい目で選べる環境を作るということを目指し、活動しているという。

この活動を通して、湯田さんたちが最終的に目指したいのは、エンドユーザーのために...というところだそうだが、その前段階として現在は、照明に関わる仕事をしている人たち、つまりエンドユーザーと関わるプロフェッショナルたちにも、情報発信を行っているという。


「自分たちが疑問視していることだけ伝えても、エンドユーザーには伝わりにくい。だからかみ砕いて丁寧に、プロフェッショナルたちが伝えて、正しい仕事をしていくべきだと考えているんです」


プロフェッショナルたちにも、まだまだ細かい情報までは行き届いていないと感じている湯田さん。まずはTOLの存在・活動を知ってもらい、一緒になってユーザーに向けて「上質な光・照明」を提供して行けたらと考えているのだとか。

そのために湯田さんが大事にしているのは、"エンドユーザーが選ぶ時の選択肢を狭めてしまわない"ということ。照明にはいろんなものがあって、それぞれにメリット・デメリットがある。それらをユーザー自身が目的、スタイルに合わせて選べる環境を作るというのが、彼らの想いであり、目標であるのだという。

たとえば次の話もそんな情報のひとつである。


「今、温暖化対策の一環として白熱電球が世界的にどんどん廃止されていっています。それにともない日本では、蛍光ランプそしてLEDへと置き換えが進んでいる一方で、ヨーロッパなどでは、効率の良いハロゲンランプも台頭してきています。実は、ハロゲン電球も白熱電球と同じようなつくりではありますが、エコの面から考えても、光の環境を守る面を考えても、とても有効な電球なんですよ。でも日本の住宅環境ではほとんど使われていないのではないでしょうか」


蛍光ランプ、LEDへの切り替えが推奨されている日本では、ハロゲン電球は肩身の狭い存在だ。実際、日本でも作られてはいるそうなのだが、あまり目にしたことがないという方も多いのではないだろうか。


ではなぜヨーロッパでは高効率タイプのハロゲン電球が台頭してきているのだろう?

「ハロゲン電球はパワーが強く、同じ電力量でも白熱電球より明るさがあります。ですので、電力量を抑えつつも明るさを確保できるのです。さらにライトコントロールにも0%〜100%まで対応しますので光の環境を作りやすいのです。蛍光ランプやLEDも、調光できるタイプもありますが、ちらつきが生じたり、いきなり消えてしまったりと白熱電球やハロゲン電球のようにスムーズな調光ができないんです」

自分たちで光・照明を作る文化を持つヨーロッパに対し、日本では現在、あまりそういう文化は根付いていない。そこに蛍光ランプやLEDが支持される訳があるのだろう。

「実は電球のフィラメントへの影響を考えると、ON/OFFだけの環境というのは、一気に0→100となるので負荷がかかっているんです。だから、蛍光ランプはつけたり消したりしていくうちに、どんどん光速(光のパワー、明るさ)が落ちていきます。その点、ライトコントロールできるハロゲン電球は光を徐々に滑らかに上げていくことができるので、その分電球への負荷が減り長寿命に繋がることもあるのです」

事実、湯田さんがご自宅の寝室で使っているハロゲン電球は、ライトコントロールすることで、5年以上経った今も交換せず使えているのだという。調光の度合いにより、電球の寿命が何倍にもなるのだそうだ。

「ライトコントロールして使うのであれば、本当ならハロゲン電球も皆さんにとってメリットがある電球なんです。でもこういう情報を知らないと選べませんよね」

TOLの活動では、ユーザーが正しい情報を持って必要な光・照明を選択できる。そのためのさまざまな情報を、メリット・デメリットを含め伝えて行く活動を、幅広く行っているのである。

interior(n)interview 私たちと照明の付き合い方

湯田さんは、照明を選ぶ時に「光源」から考えることもあるのだそうだ。「光源」とは、その文字のとおり、光を放つ物体のこと。たとえば電球や炎、日光などがそれに当たる。
生活環境の中で、その光をどういうふうに採り入れられるか?そして、それはどういう光を放つのか?電球なのか、太陽光なのか。そして最後に、その見栄えはどうか?という流れで選択しているのだそう。

この話を受けて橋本氏は次のように自身を振り返る。

「普段、自分がスタイリングするものは広告目的なものがメインなので、"人が生活する"というよりは、"見た目やトレンド"を重視することが多いです。でもその中で、モノを選ぶポイントというのが自分の中にあって、見た目だけではなくていろいろ考えてこだわって選ぶようにしていたのですが、照明については盲点でした」

橋本氏はスタイリングの時に、そのモノたちが持つ歴史や背景、年代を非常に気にしてセレクトしているのだという。極端な場合、バックボーンがないものは、どんなに見た目が良くてもセレクトしないくらいなのだとか。また、環境や安全に配慮したモノというのも積極的に選んできたのだと話す。

「それでも今回の話をしている中で、自分は電球のことまで考えて選ぶことは今までなかったですし、全然意識していなかったことに気づきました。でもこれって、実は大事なことです。たとえば自分がスタイリングした雑誌のページを見て、いいな!と思って買ってくれた人がいたとしたら...。そういうことを考えると、電球やその性質までもこだわって、気にして選びたいと思いました」

照明をもっと身近に感じ、考える。そのきっかけは、人それぞれだろう。雑誌を見て惹かれたライトから入ることもあるだろうし、自分の居心地の良さを追求した末に出会うこともあるかもしれない。
本来、「光・照明」は水や空気と同じ、人間にとって本能的なもの。そういう見方をすれば、またもう少し違った付き合い方ができるのではないか。そこに「光・照明」が変わる、新しい一歩があるような気がしている。

皆さんからいただいた質問にお答え!

Q.見栄えや居心地がいいだけでなく、
  より生活が快適になるような光の使い方とは?


A.
オススメしているのは、「一室多灯」という使い方です。今日本では「一室一灯」が一般的ですが、スタンドひとつでもいいので取り入れてみてください。光に強弱をつけることで、目の行きにくい場(光が届かない死角)ができるので、たとえばゴミ箱や配線など、見せたくないものをそこへ置くことで、部屋をすっきりさせることができます。

また光のコントロールが可能になるというのもメリットです。いわゆるライトコントロール(調光)も含めて、ムダなところにムダな光を使わないという環境に配慮した使い方ができます。


Q.ウォールウォッシャータイプの照明には
  どんなものがあるのでしょうか?


A.
「ウォールウォッシャー」の照明とは、ダウンライトの一種で、その名のとおり壁面を洗うように演出しますが、絵画などをオシャレに見せて、カッコよくするためだけのものではありません。壁面に光の筋を通す事で空間を立体的に見せ、広く感じさせることができるのです。

また、空間を広く見せ演出性にも優れる照明器具として、私は壁面に取付ける「ブラケット照明」をオススメしています。小さくても光が上下に広がるので明るさがバッチリ。天井を高く見せる効果もあります。
ブラケット照明


Q.間接照明のオシャレな使い方とは?

A.
いわゆる「間接照明」といっても器具の使い方次第でさまざまなタイプのものが当てはまります。
たとえばデスクスタンド。これひとつでいろんな用途があるんですよ。

デスクスタンドというと、書き物や読み物の時に手元を照らすというのが、本来の使い方ですよね。それをパソコンを使う時には、そのスタンドを壁に向けて、またDVD鑑賞の時には天井に向けて。そういうふうに「間接照明」としての使い方もできるんです。
デスクスタンドは机の上で手元を照らすもの。そういう固定概念を外すと、使い方も広がります。

また、そうやって使う時のノウハウとしては、前述の質問部分でも紹介しましたが、光の死角になる部分に見せたくないものを置き、隠すということですね。
スタンドを間接照明として使う時の使用例

照明をもっと身近に感じるために正しく知る 光・照明

TREND OF LIGHT

今回、光・照明についてお話をうかがった、湯田さんが主宰を務める
TREND OF LIGHT」。
活動内容については今回の記事の中でもご紹介しているが、具体的な活動やそのレポートについては、公式Webサイトでご覧になれます。


今回の取材のひとコマ

今回の取材風景

ゆっくりこういう話をしたのは、今回の取材の場が初めてだったという湯田さんと橋本氏。それでも話題は多岐にわたり、編集部としてはとっても充実した取材となりました。

橋本直征氏 プロフィール

橋本直征氏

赤松珠抄子氏に師事後、独立。
2004年よりインテリアスタイリストとして
主に雑誌、広告、TV-CFなどの
分野を中心に活動。
また、ミュージックビデオや
企業のディレクション等も手掛け、
2009年からは、写真制作にも取組み
その活動は多岐にわたる。
http://naoyuki-hashimoto.com/

ブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録

こちらから編集部へ感想・コメントが送れます。

気軽にメッセージをお送りくださいませ。お待ちしています!
※お送りいただいた内容はこちらには掲載されません。