連載「○○×橋本直征」 Dumilo&DECOR×橋本直征 interior(n)interview Vol.8-2

橋本氏が注目するショップとしてご紹介している「Dumilo&DECOR」の杉田さんと橋本氏による対談。前編では、杉田さん自身や仕事についてご紹介し、Dumiloを運営されている杉田さんの背景から、少しずつ杉田さんの考え方などに触れました。

そして続く後編では、さらにその考え方について話を広げていこうと思います。現在、日本のインテリア業界に身を置く2人が、それぞれの視点でどのように感じ、捉えているのか、語っていただきます。
「 Dumilo&DECOR×橋本直征」前編はこちら

interior(n)interview 家具は実用品。使われてこそ生きる。

前編の最後で触れたように、日本では日々の暮らしの中で"インテリア"自体の優先順位が、最後になるくらい低いと言われている。そう感じている皆さんも多いのではないだろうか。以前にも挙げたことがあるが、衣・食・住で考えると分かりやすいかもしれない。
しかしインテリアに対しての優先順位が低いのは、なぜなのだろうか?

「たとえば男性で言うと、10代の頃は洋服、そして20代になったらカバンや時計などの小物や車にも興味が出てくる人が多いと思います。だからそういうところにお金を使いたいので、インテリアに...というタイミングがない人もきっといると思うんです。インテリアに興味を持つのは、自分の家を持ってから...という人も多いでしょうね」

と語るのは橋本氏。かつてTVドラマで、オシャレにはとっても気をつかって値の張る洋服をたくさん持っているものの、自宅はちょっと周りが驚くような古アパートという設定の主人公がいたのを思い出す。それは極端な例ではあるが、あながち間違ってもいないのかもしれない。

「車、ブランド品、見た目...とにかく人から見られた時にどう思われるか?を非常に気にするんだと思う。そしてどこか1点に集中してこだわりを見せる、"一点豪華主義"のような人が多いですよね」

と橋本氏は続ける。それに対して杉田さんも次のように話す。

「アメリカ人と比べて、日本人はトータルバランスを取るのが苦手な気がします。衣・食・住、バランス良くこだわればいいと思うんですけどね」

これは日本人ならではの性分なのだろうか。みんながみんなそうとは言わないが、こだわりを強く見せる人の中には、そういう傾向があるのも確かだ。 とはいえインテリアに興味を持ち、自身の家や部屋についてこだわって考え、自分にとって快適な空間を上手に作っている人もいる。

しかし一方で、気になっていることがあると杉田さんは語る。

「インテリアにこだわっている人の中には、家具などを暮らしの中の実用品ではなく、装飾品・美術品として考えている方もいらっしゃると思います。特にアンティーク家具の輸入をしていると、そういうコレクターの方に多く出会うんです。でも良いものは使って、触れてみて初めて価値が分かる。自分としては、そのプロダクト(家具)が生まれた意義を全うできる場所に納品したい、というのが本音です。その場所こそ、プロダクトが生かされる環境だと思うので...」

物を大切にする気持ちは同じかもしれないが、大切にするあまり、使えない、使わない。それでは本来実用品であるはずの家具の良さが半減してしまう。 この考え方には橋本氏も同じ思いだと語る。また同じ家具を愛するのであれば、こうありたいという、憧れのエピソードがあるのだという。

「独身の頃に、ハンス・ウェグナーのYチェアを1脚購入した人がいて、その人が結婚後、妻のためにYチェアを購入。ダイニングチェアとして使っていたのだそうです。そして子どもが生まれるごとにその椅子を買い足し、どんどんYチェアが増えていくにつれ、自然と馴染み具合のグラデーションが出来ているという...。家族みんなで同じ椅子を使っているんですけど、夫婦、親子とそれぞれに風合いが違うわけです。 実は僕自身もYチェアが好きで、自分がスタイリストになって初めてもらった給料で購入し、使っているんです。だからぜひとも自分でもこのエピソードのように実現できたらな...と考えています」

ひとつの椅子を愛し毎日使うからこそ、それぞれの風合いによるグラデーションができ、使う人に馴染んでいく。家具を愛するというのは、こういうことなのかも...と言葉での説明が必要ないくらいに伝わってくるエピソードだ。

interior(n)interview 杉田さんの視点で見た、L.A.インテリア事情

次に紹介するのは、杉田さんの視点から見たL.A.など海外のインテリア事情について。しばらくその地で暮らし、商売をしてきたからこそ見えることもあったのではないかと思い、尋ねてみた。


「L.A.に限らず海外では、ライフステージに合わせて家や家具を買い換える人が多いです。これは日本とは大きく違う点ですよね。独身の頃、結婚したカップル、そして家族ができ、また子どもたちが独立したあと夫婦2人...そういうタイミングで変えるんです」


住宅事情の違いはあるとはいえ、こういうところからも暮らしとインテリア・家が密接なことがうかがえる。
以前、イギリスでの暮らしについて澤さん(インテリアンな人々 第6回)が、"海外では引越をする時にいらないものを捨てるのではなく、誰かに譲ってから新しいものを手にする文化がある"という話をしていたが、アメリカでも同様なのだろう。そういう背景があるからこそ、その時々のライフステージに合わせて、家づくりができるのかもしれない。
「日本では、こだわりを充分生かせるような広い家や土地を手に入れるのは、結構難しいことです。だからどうしても"家(住)"に対する比重が軽くなって、そこにこだわることをあきらめてしまっている傾向があるように感じます」

と語るのは橋本氏。 確かに今の日本には海外のようにライフステージで家を住み替えるという発想がそもそもないし、これまでの日本の住宅文化から考えても、果たして日本人に受け入れられるかどうかは難しい。

また、杉田さんが仕事を通して見えてきたこともあるという。

「仕事柄、セレブリティの方と仕事をする機会が多いですが、彼らは美意識が本当に高いです。これは国内外問わず。いいものに触れる機会が多いので、感覚やスタイルが研ぎ澄まされているんです。トータルバランスを取るのがうまいですし、良い情報をそれぞれが持っています。そしてそれをお互いに共有し合うので、より良い情報が彼らには常に入ってくるんですよね。これはぜひ見習いたい点ですね」

良い情報を共有し合うことで、さらに良い情報を得られるという環境は、すばらしい流れだと思う。セレブリティだから...というのではなく、インテリアが好きという人の間から、こういう流れがどんどんできていくといいなと、この話を聞いて感じた。

そして対談の最後に、ひとりのビジネスパーソンとして今、杉田さんが思うことについてうかがった。

「日本のビジネスパーソンには、もっと海外へ出ていろんなもの、ことを見ることをオススメしたいです。たとえば展示会。自分の専門ジャンルに限らず、興味を持ったものにどんどん足を運ぶといいと思います。海外の展示会は、来ている人もおもしろいんですよ。パワーに溢れていて、自分も足を運ぶとワクワクします」

橋本氏も海外で行われるインテリアの展示会へ実際に足を運び、そのパワーを肌で感じたと話す。いいものは、世界中にあるということ。グローバルに仕事をしている杉田さんは、世界中で仕事のタネを探し、チャンスを見つけているのだろう。

ご自身のことを"商売人"と話す、杉田さん。たまたま出会った"家具"に惹かれたのでインテリア業界で仕事をしているけれど、面白いものを見つけたら、何でも売っていきたいと語る。非常に意欲的な方だ。

そんな杉田さんはまた数年後、L.A.に拠点を戻し仕事を続けていこうと考えているという。自分の思い描く夢に向かって、まだまだ突き進んでいる途中なのだとか。
まずは2011年、Dumiloでは家具だけでなく、インテリア雑貨やガラス物などの販売を強化していくとともに、海外で仕入れて日本で販売を考えている人の役にも立ちたいと思っているということだ。


今回、杉田さんとの対談を通して感じたのは、"インテリア"を新しい視点で捉えている方だということ。杉田さんの考え方はシンプルで、とてもストレートに伝わってくると思う。そんな彼の想いが"インテリア"業界へ新しい風となると、何か楽しいことが待っているんじゃないか。そんな気持ちになれた。
何かに惚れ込むということのパワーを教えてもらったような気がする。
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アンティークを持つこと=リサイクル Dumilo&DECOR

Dumilo&DECOR

今回お話をうかがった、杉田さんが代表を務める「Dumilo JAPAN」。そのDumiloのショールームが江東区青海にある「Dumilo&DECOR」です。



今回の取材のひとコマ

取材中のひとコマ Dumiloさんにはたくさん海外インテリアの本がありました。

取材中、インテリアの本を見始めたお二人の様子。ずいぶん話が盛り上がっていたようでした。本は全部海外で購入されたものということでしたが、いろんなのがありましたよ!

橋本直征氏 プロフィール

橋本直征氏

赤松珠抄子氏に師事後、独立。
2004年よりインテリアスタイリストとして
主に雑誌、広告、TV-CM美術などの分野を
中心に活動。
また、ミュージックビデオや企業のディレクション、セレブリティの邸宅等も手掛け、
2009年からは、写真制作、発表にも精力的に取組み、その活動は多岐にわたる。
http://naoyuki-hashimoto.com/

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